「ケアマネ(介護支援専門員)、取ったほうがいいのかな」。リハ職のキャリアの話になると、必ずと言っていいほど出てくるテーマです。受験資格はもうある。でも勉強時間が取れるか分からないし、取って本当に意味があるのかも分からない。そんな状態で足踏みしている方も多いと思います。

先に正直に書いておくと、私自身は迷いませんでした。きっかけは職場の方針で「取ってほしい」と言われたことでしたが、当時すでに介護保険領域で働いていて、この資格の知識が自分の仕事に必要だと分かっていたからです。だから即断即決でした。

ただ、迷わなかったのは判断材料が揃っていたからです。もし材料がなければ、私も同じように足踏みしていたと思います。この記事では、その判断材料を渡したいと思います。実際にかけた勉強時間、2度受験することになった失敗談、費用のこと、向き不向きの感覚。取った後に何が変わったかは別の記事に書いたので、ここでは「取る前」の話に絞ります。

実は、2回受験しています

最初に一番かっこ悪い話からします。私はこの試験に2回挑んでいます。

1回目は、教材を一式買いました。買った時点では「これでやるぞ」という気持ちだったはずです。ところが本業が忙しく、結局ほとんど手をつけられないまま試験日を迎えました。勉強法がどうという以前の、完全な準備不足です。残ったのは、ほぼ新品の教材だけでした。

これは私だけの話ではないと思っています。ケアマネ試験を受ける層は、現場で5年以上働いている中堅です。仕事の責任は重くなっているし、家庭がある人も多い。「教材を買う」までは誰でもできますが、「日常の中に勉強時間を確保する」のはまったく別の問題でした。受験を迷っている方には、勉強の中身より先に、この時間確保の算段を立てることをおすすめします。

翌年の2回目は反省して、やり方を変えました。使ったのは過去問とYouTubeの解説動画だけです。新しい教材は買い足していません。過去問を解いて、分からないところを動画で補う。この繰り返しで乗り切り、翌年で合格できました。

勉強時間の実際:就寝前の数時間を、2ヶ月ぼちぼちと

2回目にかけた勉強時間は、就寝前の数時間を2ヶ月くらい、ぼちぼちと続けた程度です。世間で言われる目安からすると、かなり少ないほうだと思います。

ただ、これには前提があります。私はすでに介護保険領域で働いていて、制度の言葉に日常的に触れていました。加えてPTという職種柄、医療分野の出題範囲はもともと理解している部分が多かった。つまり「ゼロから覚える量」が少なかったんです。同じ勉強時間でも、病院勤務で介護保険にあまり触れていない方なら、もっと必要になるはずです。勉強時間の目安は、今の職場が介護保険にどれだけ近いかで大きく変わると考えたほうがいいと思います。

一方で、苦手分野もはっきりしていました。医療分野は得意、福祉分野がやや苦手。これはPT共通の傾向だと思います。生活保護や成年後見といった福祉制度の領域は、リハの現場ではなかなか触れないので、そこは意識して過去問を回しました。

それから、両立の苦労も正直に書いておきます。当時は子どもが生まれたばかりで、夜泣きの対応と夜間の勉強が完全にぶつかりました。就寝前に机に向かっても、泣き声で中断される。再開する頃には眠気が勝っている。計画どおりに進んだ日のほうが少なかった気がします。「毎日◯時間」と決めるより、「できる日にできる分だけ、ただしやめない」くらいの構えのほうが、この時期の受験には合っていました。

制度と費用の基本

制度面も簡単に押さえておきます。試験(介護支援専門員実務研修受講試験)は年1回で、PTなどの国家資格に基づく業務経験が通算5年以上かつ900日以上あることが受験資格の代表的な要件です。合格率は長らく低めに言われてきましたが、厚生労働省の発表では第27回(2024年度)は受験者53,699人に対し合格者17,228人、合格率32.1%でした(出典:厚生労働省「第27回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」)。最新の要項は必ずお住まいの都道府県の実施情報で確認してください。

費用について、私の実感で言えるのは2つです。1つは、1回目に買った教材代がまるごと無駄になったこと。金額の問題というより、「買っただけで満足する」リスクは本当にあるということです。もう1つは、合格後もお金の話が続くことです。この資格は更新制で、私もこれから更新研修を受講する予定です。私の場合は費用を法人が持ってくれますが、自費になる職場もあります。研修費用は都道府県や研修区分で異なるので、受験前に「更新費用を職場が負担してくれるか」を確認しておくと、長期のコスト感が掴めます。

向く人・向かない人

向き不向きは、はっきりあると思います。向かないのは、シンプルに症例や疾病と向き合っていたい人です。ケアマネの仕事は、介護保険という法制度の枠組みと、その方の生活全体に関する内容が主になります。身体機能をどう良くするかという世界とは、頭の使いどころがかなり違います。「治療的な関わりこそ自分の軸だ」という方が義務感だけで取ると、勉強も更新もしんどいだけになりかねません。

逆に、利用者さんの生活背景や制度の仕組みまで含めて考えるのが苦にならない人には、取る価値のある資格だと思います。私自身、取って「要らなかった」「期待と違った」と感じたことは一度もありません。

キャリアや給与への影響も、一定のプラスに働くと思います。施設の管理職や計画作成担当者など、この資格が必須または有利に働くポジションは実際にあります。ただ、私自身について正直に言うと、取得の少し前に年俸制に切り替わっていたので、給与への直接の影響は小さかったです。「取れば給料が上がる」と単純には言えません。効いてくるのは目先の手当より、任される役割の幅のほうだと感じています。

■ たこすの現場経験から

振り返って一番伝えたいのは、やっぱり1回目の失敗のことです。教材を買ったとき、私は「受かる準備」を始めたつもりでいました。でも実際に始まっていたのは「教材が積まれていく日々」でした。本業の忙しさは言い訳になりましたが、正直に言えば、勉強を組み込む生活の設計をしていなかっただけです。

2回目がうまくいったのは、意志が強くなったからではなく、やり方を軽くしたからだと思います。分厚い教材を最初から読むのではなく、過去問を解いて、分からないところだけYouTubeで補う。夜泣き対応で細切れになる夜でも、「過去問を数問だけ」なら再開できました。完璧な勉強計画より、崩れても戻れる勉強のほうが、働きながらの受験には強かったです。

迷っている方に判断材料として渡せるのは、この3つです。今の職場が介護保険にどれだけ近いか。勉強時間を生活のどこに置けるか。そして、生活と制度を扱う仕事に興味を持てそうか。この3つがある程度「イエス」なら、私のように迷わず取ってよい資格だと思います。逆にどれも曖昧なら、急ぐ必要はありません。試験は年1回、来年もあります。

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たこす
理学療法士・介護支援専門員。総合病院を起点に、デイサービス・訪問リハ・回復期・施設運営・エリアマネジメントと、約20年にわたりリハ職としてのキャリアを積んできました。 専門領域での偏りに悩んだ20代、役割が急に増えた30代、そして40代を迎える今も "働き方を磨き続けること" をテーマに日々試行錯誤中。 現場だけでなく、新人育成・職場の役職・施設管理者・エリアマネジメントなど "横のキャリア" にも触れてきたことで、一般的なセラピストの道とは少し違う視点を持つようになりました。 だからこそ今、キャリアに迷うあなたにとって「少し先を歩く人」として、気づきを届けられることがあると感じています。