回復期リハからの転職|10年いた現場を離れて見えたもの
回復期リハビリテーション病棟でのリハビリは、やりがいと充実感がある仕事です。
退院に向けて患者さんと向き合い、少しずつ動作が改善していく瞬間に立ち会える。それは、この仕事を選んでよかったと思える瞬間でした。
でも、ある時期から「このままでいいのだろうか」という感覚が頭を離れなくなっていきました。
それは不満ではなく、もっと違う貢献の形があるのではないかという、静かな問いでした。
この記事では、転職を「逃げ」ではなく「次の目標に向けた選択」として捉えた私の経験をお伝えします。特に、目的が明確な転職がどれほど動きやすいか、感じてきたことを率直に書いてみます。
回復期リハビリで感じていた充実感と、ある限界
回復期病棟でのリハビリには、独特の手応えがあります。
入院初日から退院まで、患者さんの回復に密接に関わることができる。主治医・看護師・MSWとの連携も濃く、多職種で一人の患者さんを支える仕組みが機能している現場です。
ただ、制度上の制限もあります。
医療保険内でのリハビリには上限単位数があり、1日・1週間に提供できるリハビリの量には上限があります。その枠の中で最善を尽くすのがセラピストの仕事なのですが、私はそこに少しずつ「もどかしさ」を感じるようになっていきました。
一人の患者さんに丁寧に向き合うほど、「この方にはもっと関わりたい」という気持ちが出てくる。でも制度の枠はそれを許してくれない。それ自体は仕方のないことなのですが、もうひとつ気になり始めたことがありました。
「自分が関わることのできる人数は、今のやり方だと限られている」
そのことへの問いが、少しずつ大きくなっていきました。
転職の背景|ネガティブではなく、目標から始まった決断
転職を意識したのは、不満があったからではありません。
むしろ当時の職場には恵まれていたと思っています。それでも「次」を考えたのは、自分の中で新しい目標が芽生えてきたからです。
それは「もっと多くの方に、これまで積み上げてきた経験や知識を役立てたい」という想いでした。
回復期の中で磨いてきたもの—動作分析、環境調整、生活への落とし込み、家族への説明—これらは、一対一のリハビリ場面だけで使うにはもったいないと感じていました。制度の枠を超えたところで、もっと広く活かせる形があるのではないか。そう思い始めた頃、ひとつのサービスを紹介されました。
小規模多機能型居宅介護との出会い
「小規模多機能型居宅介護」という名前を、みなさんはご存知でしょうか。
通い・泊まり・訪問の3つを組み合わせて、地域で暮らす高齢者の生活を柔軟に支えるサービスです。
紹介を受けたとき、正直「リハの専門職がそこで何をするのか」がすぐにはイメージできませんでした。
回復期のように「改善を目指す」リハビリとは違い、日常生活そのものを支えるという発想です。最初はギャップを感じましたが、話を聞くほどに「これが自分の探していた形かもしれない」と思うようになっていきました。
生活の場に入り込み、その人の暮らし全体を見ながら動く。特定の時間枠の中だけでなく、その方の1日・1週間の流れの中で関わることができる。1対1の深さだけではなく、生活全体への広さというアプローチが、そこにはありました。
転職して見えたもの
実際に環境を変えて気づいたことは、「リハビリとして正式に提供する時間以外にも、自分の専門性を活かせる場面がいくつもある」ということです。
食事の姿勢を見ながら口腔機能のリスクを察知する。外出支援の中で歩行環境を確認する。介護スタッフへのケアの伝え方を工夫する。
こうした関わりが、単位数とは関係なく自然に発生していきました。
また、介護職・看護師・相談員・管理者といった職種と対等に協議しながら動く経験は、回復期の多職種連携とはまた別の学びがありました。「リハの専門家として意見を出す」から「チームの一員として生活を支える」という役割のシフトが、自分の視野を大きく広げてくれました。
目標を持って転職すると、環境が変わっても軸がブレません。「なぜここに来たのか」が明確であれば、戸惑いの中でも方向性を見失わずに動けます。転職直後の不安は誰にでもありますが、目的がある転職はそれを乗り越えやすいと感じています。
まとめ|目的が明確な転職は、迷いが少ない
回復期での1対1リハへの充実と、上限の中での「もどかしさ」を経験した
「もっと多くの人に関わりたい」という目標が転職の出発点だった
小規模多機能という形が、その目標に近い環境だと感じた
目的が明確な転職は、変化の中でも軸がブレにくい
転職は「今の場所から離れること」ではなく、「次に向かうこと」だと、今は思っています。
何か目標があって動いた転職は、たとえ不安があっても、自分の中に手がかりがある。それが大きな違いになります。
■ たこすの現場経験から
回復期での日々は、今の自分の土台になっています。退院後の生活を想定しながら関わる視点、家族との面談で言葉を選ぶ力、多職種の中で自分の意見を伝えるスキル。これらは回復期でなければ積みにくいものだったと感じています。
一方で、上限単位数の中での個別リハビリだけが「リハ職の貢献のすべて」ではないと、転職して初めて実感しました。小規模多機能という現場は、私に「生活を支えるリハ」という新しい視点をくれました。時間や単位の枠ではなく、その人の暮らし全体に関わるという感覚は、回復期では得にくいものでした。
転職前に「自分は何をしたいのか」を言葉にしておくことが、いちばんの準備だったと思っています。環境が変わっても、目標が軸になってくれる。あなたが今、次を考えているなら、まず「何のために動くのか」を自分に問いかけてみてください。