「小規模多機能型居宅介護」という職場の名前を、聞いたことがあるでしょうか。介護業界では珍しくないサービスですが、PT・OT・STの転職先候補として挙がることは少なく、「名前は知っているけれど、セラピストが何をするのかイメージできない」という方がほとんどだと思います。

私は病院や在宅の現場を経て、小規模多機能型居宅介護で働いた経験があります。実際に入ってみると、病院とはまったく違う世界でした。戸惑いがなかったわけではありませんが、それ以上に「在宅に寄り添いたいリハ職には、かなり相性のいい職場かもしれない」と感じたのを覚えています。

転職を決めた経緯や気持ちの変化は別の記事に書いたので、この記事では「仕事の中身」に絞ってお伝えします。セラピストが実際にどんな立ち位置で働き、どこに魅力と難しさがあるのか。転職先の選択肢として検討する材料にしてもらえたらうれしいです。

小規模多機能型居宅介護とは|通い・訪問・泊まりをひとつの事業所で

小規模多機能型居宅介護は、「通い」を中心に、必要に応じて「訪問」と「泊まり」を組み合わせて利用できる、地域密着型の介護保険サービスです。デイサービス・訪問介護・ショートステイを別々の事業所で使うのではなく、ひとつの事業所のなじみのスタッフが3つのサービスをまとめて提供するのが特徴です。

利用料の介護保険部分は月額定額制が基本で、「今週は通いを増やして、来週は訪問中心に」といった柔軟な使い方ができます。ご本人の状態や家族の事情に合わせてサービスの形を変えられるので、「住み慣れた家での生活を続けたい」という方を支えるには、とても筋のいい仕組みだと思っています。

セラピストの立ち位置|「リハ専任」ではなく介護職兼務が多い

まず最初にお伝えしておきたいのが、ここです。小規模多機能でのセラピストは、「リハビリだけをやる専任スタッフ」というより、介護職と兼務になるパターンが多いはずです。日中の見守り、食事の介助、送迎、そして排泄介助も含めて、生活を支える業務全般に入りながら、その中で専門性を発揮していく形になります。

正直に言えば、「セラピストだから排泄介助はしない」という思いが強い人には、向かない職場かもしれません。私自身は管理者になる前提で就職して、すべての業務・シフトに入るつもりでいたので、そこへの抵抗はありませんでした。ただ、この前提を知らずに入ると、いちばんギャップになりやすいところだと思います。

見方を変えると、排泄や食事といった生活場面に日常的に入れることは、セラピストにとって大きな情報源でもあります。トイレへの移乗のしかた、食事中の姿勢、ちょっとした段差でのふらつき。訓練室では見えない「生活の中の動き」を毎日見ながら関われるのは、この職場ならではの面白さでした。

なお、小規模多機能には利用者ごとのケアプランを作る「計画作成担当者」という役割がありますが、これは法令上ケアマネ(介護支援専門員)の資格が必要です。セラピストとして入職してすぐに計画づくりを担えるわけではない、という点は知っておくといいと思います。

最大の魅力|単位数に縛られない「圧倒的な個別性」

私がいちばん魅力に感じたのは、個別性の高さです。病院のリハビリは、制度上の単位数の枠の中で提供時間が決まります。小規模多機能には、その枠がありません。もちろん、特定の方だけに時間をかけて不公平感が出ないような配慮は必要ですが、その方の生活や希望に合わせて、どっぷり個人に向き合うことができます。

「この方が家での暮らしを続けるために、いま何が必要か」から出発して、通いの場面でも訪問の場面でも関わり方を組み立てられる。在宅生活に寄り添いたいと考えているリハ職にとっては、最適解のひとつだと私は思っています。

個別性の高さは、関わる「場所」の自由さにもつながっています。単に施設の中や在宅の生活範囲に縛られるのではなく、外の環境に一緒に出向いてアプローチすることもできます。買い物に付き添う、行きたかった場所に一緒に行ってみる。その方が本当にしたいこと・やりたいことを、生活の枠を越えてサポートできるのも、この仕事の面白さだと感じています。

転職前後のギャップについてよく聞かれるのですが、私の場合はそこまで大きなギャップはありませんでした。むしろ「楽しさ」をより感じた、というのが正直なところです。

難しさ|一人職種の守備範囲と、家族とのすり合わせ

一方で、難しさもあります。ひとつは、専門職が自分一人だったことです。幸い、グループ内の他の施設にセラピストがいて相談はできましたが、それでも「どこまでが自分の守備範囲なのか」に悩む場面はありました。病院のように同僚のセラピストと日常的に相談し合える環境ではないので、自分で判断して動く力は求められます。

もうひとつは、周辺環境とのすり合わせです。在宅生活は、本人とサービス提供者だけでは成立しません。ご家族をはじめとした周りの方々の意見や思いがあり、それが本人の希望と食い違うことも珍しくありません。「本人はこうしたい、家族はこう考えている、事業所としてできることはここまで」という間で落としどころを探るのに、苦戦したこともあります。病院で家族説明に慣れている方でも、在宅の意思決定の重さは、また別ものだと感じるかもしれません。

求人の探し方|「PT」ではなく「セラピスト」で出ていることも

求人を探すときのヒントをひとつ。小規模多機能の求人は、「PT」「OT」「ST」と職種別に出ているとは限らず、「セラピスト」という職域でまとめて募集されている可能性があります。デイサービスの求人でよく見る「機能訓練指導員」という名義でも、小規模多機能ではあまり見かけない印象です。検索条件を自分の資格名だけに絞っていると引っかかってこないことがあるので、職種名を広げて探してみてください。

そしてもうひとつ正直に言うと、「セラピスト」募集で出ていたとしても、小規模多機能という業態自体がセラピストにあまり知られていないため、応募が集まりにくい印象があります。裏を返せば、この記事を読んで興味を持った方にとっては、競争の少ない選択肢だということです。

向いている人

ここまでの内容をまとめると、小規模多機能が合うのは、利用者さんに「寄り添いたい」「その人の何かを叶えるサポートをしたい」という思いが強い人です。逆に、リハビリの専門業務だけに集中したい人、訓練室での機能訓練にやりがいの中心がある人には、物足りなさや違和感が出てくるかもしれません。

どちらが正しいという話ではなく、自分のやりがいの置き場所がどこにあるか、という相性の問題だと思います。

■ たこすの現場経験から

私が小規模多機能に進んだきっかけは、一人のセラピストとして関われる人数や時間に限界を感じたことでした。目の前の方に丁寧に関わるほど、「自分が支えられるのはこの範囲まで」という感覚が強くなっていって。より多くの方をサポートできる形を探すなかで、小規模多機能、そして施設運営へと進みました。

働き始めてからは、専門職が一人であることの心細さは正直ありました。相談できる相手がグループ内にいたのは幸運でしたが、日々の判断は基本的に自分です。それでも、利用者さんの生活にどっぷり関われる日々は、想像していたより楽しかった。振り返ってみて、いちばん残っているのはその感覚です。

もしあなたが「在宅生活に寄り添いたい」という思いを持っているなら、小規模多機能は選択肢に入れて損のない職場だと思います。名前すら知らなかった、という方も多いはずです。まずは近くの事業所を調べてみるところからでも、十分な一歩になると思います。

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たこす
理学療法士・介護支援専門員。総合病院を起点に、デイサービス・訪問リハ・回復期・施設運営・エリアマネジメントと、約20年にわたりリハ職としてのキャリアを積んできました。 専門領域での偏りに悩んだ20代、役割が急に増えた30代、そして40代を迎える今も "働き方を磨き続けること" をテーマに日々試行錯誤中。 現場だけでなく、新人育成・職場の役職・施設管理者・エリアマネジメントなど "横のキャリア" にも触れてきたことで、一般的なセラピストの道とは少し違う視点を持つようになりました。 だからこそ今、キャリアに迷うあなたにとって「少し先を歩く人」として、気づきを届けられることがあると感じています。