私が採用の面接をするようになったのは、医療の現場から介護の現場へ移って、施設の運営に関わるようになってからです。それまでは面接される側だったので、する側に回ってみると、見える景色が思っていたより違っていました。

面接してきたのはリハ職だけではなく、いろいろな職種の方です。その中で少しずつ分かってきたのは、応募者がアピールしてくる「資格」や「経験年数」を、採用側はそこまで重視していない、ということでした。

では何を見ているか。ひとつは、その人の歩みに筋が通っているか。もうひとつは、入ってからどう動いてくれそうか、です。

経歴に筋が通っているか

面接で「もったいないな」と感じるのは、能力が足りない人ではありません。自分のこれまでを、ひとつの流れとして話せない人です。

転職の回数が多いこと自体は、大した問題ではないと思っています。回数が多くても、それぞれに理由と流れがあれば、納得して受け取れます。

以前、医療の現場から介護、それから在宅へと移ってこられた方に、面接でお話を聞いたことがあります。経験の幅は広いのに、一貫性の部分がどうしても弱く感じました。理由をうかがうと、「家から近かったから」。職場を選ぶ理由として、もちろん悪いことではありません。生活を考えれば、当然の判断だと思います。ただ、雇う側からすると、その理由だけでは「この人がうちで何をしたいのか」が見えてこなくて、正直、推しづらいんです。

逆に、経歴は地味でも「なぜこの道を選んできたか」が一本の話になっている人は、次に何をしたいかも想像しやすい。それだけで、ずいぶん印象が変わります。

入ってからの姿が見えるか

もうひとつ大事なのが、入職後にどう動いてくれそうか、がイメージできるかどうかです。

面接が終わったあと、採用担当はたいてい、ほかの人に「この人を採りたい」と伝える立場でもあります。そのとき勧めやすいのは、「うちに入ったら、こういう場面で力を出してくれそうだ」と具体的に思い浮かぶ人です。経歴が立派でも、「で、うちで何をしてくれるんだろう」が浮かんでこないと、こちらも推す言葉が出てきません。

だから面接では、次の職場で自分がどう動きたいか、どんな場面で役に立てそうかを、自分の言葉で話せると伝わりやすいです。

実際、面接の時点で「入ってからこう動いてくれそうだな」と自然にイメージが湧いた人は、入職後もたいてい良い形で力を発揮してくれます。面接で受けた印象と、入ってからの姿は、思っているより重なるものです。

では、面接でどう伝えればいいか

そう書くと、立派な物語を用意しなければいけないように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。これまで働いてきた場所を、ひとつずつ「なぜ選んで、そこで何を得て、なぜ次へ進んだのか」で振り返ってみる。それだけで十分です。

きれいにまとまっていなくてもかまいません。むしろ、回り道や、うまくいかなかった経験も含めて「自分なりにこう考えて動いてきた」と話せる人のほうが、こちらには誠実に映ります。取り繕った完璧な経歴よりも、ずっと信頼できるんです。

そして、その流れの先に「次はこういうことがしたい」とひとことそえられたら、面接官の中で、あなたの働く姿がぐっと具体的になります。

もし今、転職を考えているなら

職務経歴書を埋めはじめる前に、一度だけ立ち止まってみてほしいです。これまでの選択を、自分の言葉でひとつの流れとして語れるか。そして、次の職場で自分がどう力になれそうか、イメージできているか。

派手な経歴は要りません。背伸びせずにそれを話せる人は、見ていて信頼できます。

もうひとつ、正直にお伝えしておきます。面接でこちらが感じた小さな引っかかりは、入職後に大きな壁になりやすいんです。だからこそ、無理に自分を大きく見せるよりも、素直でいるほうが、結局はお互いにとって良い結果につながります。

■ たこすの現場経験から

偉そうに「一貫性が大事」なんて書きましたが、私自身の経歴も、並べてみればけっこう移ってきました。スタートは総合病院で、そこから回復期、訪問、デイサービスを経て、今は施設の運営やマネジメントに関わっています。職種も働く場所も、ずいぶん変わってきました。

ただ、自分がなぜこう動いてきたのかを考えると、根っこにあるのはたぶん「もっと多くの人に関わって、力になりたい」という気持ちなんだと思います。

一人のセラピストとして、目の前の患者さんと向き合う時間には、確かなやりがいがありました。でも、関われる人をもっと増やしたい——その思いが、いつの間にか自分をマネジメントの側へ動かしてきました。

そう考えると、転職の回数そのものは、やっぱり大した問題じゃないのかもしれません。動いた先に、自分なりの理由がつながっているか。面接で人とお会いするたびに、私自身もそこを問い直しています。

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たこす
理学療法士・介護支援専門員。総合病院を起点に、デイサービス・訪問リハ・回復期・施設運営・エリアマネジメントと、約20年にわたりリハ職としてのキャリアを積んできました。 専門領域での偏りに悩んだ20代、役割が急に増えた30代、そして40代を迎える今も "働き方を磨き続けること" をテーマに日々試行錯誤中。 現場だけでなく、新人育成・職場の役職・施設管理者・エリアマネジメントなど "横のキャリア" にも触れてきたことで、一般的なセラピストの道とは少し違う視点を持つようになりました。 だからこそ今、キャリアに迷うあなたにとって「少し先を歩く人」として、気づきを届けられることがあると感じています。